キーワード・用語解説

児童虐待

児童虐待は、親または親に代わる保護者により、非偶発的に児童に加えられた、1)身体的暴行 2)保護の怠慢ないし拒否 3)性的暴行 4)心理的虐待と定義されている(児童虐待調査会)。諸調査によると、虐待は3歳児以下の乳幼児に多く、未熟児、多胎児、一人親、多子といった育児負担の多さが特徴的である。児童虐待が問題となるのは、逃れがたい状況の下で力のある者からない者に加えられる行為であること、子どもの固有の成長・発達の権利が侵害されることにある。したがって人権問題であり、社会構造的な問題であるという認識が欠かせない。1989年には国連で「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」が採択され、1994年には我が国も批准した。“保護し育てるもの”から“一個の権利主体”へと児童観の転換が求められていると言える。児童福祉法はあるものの、親権の強い我が国では、児童の保護か親権の行使かをめぐって混乱が生じていたが、2000年5月に児童の人権を優先する「児童虐待防止法」が成立し、同年11月施行された。(1993.4)
 なお、同法は悲惨な虐待が後を絶たないことから、2007年5月、児童相談所の立ち入り調査の権限を大幅に強化した改正法が成立、2008年4月施行された。
 児童虐待への対応を強化するため、2011年5月「民法の一部を改正する法律」が成立し、親権停止制度が新設された。親権についてはこれまで民法で親権喪失制度のみが規定されていた。これは期限を設けずに親権全部を喪失させる制度であることから、申請も審判も慎重にならざるを得ない状況があった。このため民法自体を見直す必要性が指摘され、児童虐待防止法成立後初めて民法の改正に至った。
 今回新設の親権停止制度は2年以内の期限を限った親権の停止を定めたものである。親権を理由に児童虐待を正当化したり不当な主張をする親権者への対処に、有効に機能することが期待されている。(2011.11)

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