女性の学びを拓く
−日本女性学習財団70年のあゆみ−
企画・編集;(財)日本女性学習財団
発行:ドメス出版
2011年、A5判、310頁、定価2,619円(本体2,381円)
ISBN:978-4-8107-0751-9
■特徴
本書では70年にわたる財団の活動を、近現代の女性の教育・学習活動史との関連で、初めて位置づけました。
■編纂の経緯、意義
1920年代の後半、文部省は婦人教育行政の整備に着手し、女子青年・家庭婦人の組織化を進めました。その活動拠点として建設されたのが、財団の前身である日本女子会館です。わが国初の女性のための宿泊型社会教育施設でした。
2007年、社会教育と女性史の研究者をメンバーとする編纂委員会を設置。3年にわたって、資料発掘や関係者へのヒアリング調査を実施しました。成果として、戦前の女子青年団・婦人会による会館建設、戦後の“家庭教育”“婦人教育”の推進、国際婦人年以降の女性のエンパワーメント支援まで、時代の中で矛盾を抱えつつ、女性の学習支援に取り組んだ軌跡を明らかにしています。
■付録CD-R「女性の学習の歩み」実践・研究レポート集成
「女性の学習の歩み」実践・研究レポート募集事業の全受賞レポート等43編を収録。
財団の軌跡は、成人女性の社会教育史そのものです。女性史、女子教育・婦人教育に関心のある方をはじめ、女性のエンパワーメントに取り組む方に是非お勧めします。
本書の概要
■ 財団史編
- 国家による女性の組織化が始められた1930年代、わが国初の"女性のための社会教育施設"として日本女子会館が建設。なぜ、どのように女子会館は建設されたのか。当時の社会や女性の状況などをふまえ明らかにした。女子会館の事業活動や大東亜生活協会の活動など新事実も発掘。(第1章)
- 敗戦後、日本女子会館の建物はGHQに接収され、財団は共立女子学園に事務所を移転し、かろうじて活動を継続。敗戦の影響からどのように財団活動を再建したのか。月刊『女性教養』の創刊や家庭教育推進に力を入れた過程を、明らかにする。また、戦前から財団の名称や事業目的として使用された「女子社会教育」をとおして、戦前と戦後の財団活動の継続性を考察。(第2章)
- 1975年国際婦人年をきっかけに、女性運動は大きな盛り上がりを見せる。財団も事業展開の軸足を「婦人教育」へと移行させ、婦人教育研究集会、婦人問題研究会、僻地婦人教育交流の集いなど婦人問題解決に向けたリーダー層の研修に取り組む。(第3章)
- 1995年第4回世界女性会議(北京会議)は、個としての女性の人権を明確化。1999年には「男女共同参画社会基本法」が成立する。財団も、男女共同参画の推進に向けて「女性の人権」「女性のエンパワーメント」に視点をすえた事業を開拓した。子育て支援や女性のライフ・キャリア支援、コラボレーション・セミナーなど近年の事業を紹介し、今後の女性の学習支援の課題と可能性を展望。(第4章、第5章)
○「コラム 財団にゆかりの人々」
財団活動を牽引してきた主要な人物を紹介
吉岡弥生、関屋龍吉、井上秀、塩ハマ子、志熊敦子、藤原房子
○「コラム 日本女性学習財団と私」
財団事業を活かし自らの人生と社会的活動を展開した学習者の手記を掲載
■ 論文編
編纂委員と財団関係者が、各人の専門の立場から執筆した研究論文を掲載
- 1 社会教育における成人女性の学習をとらえる概念の変遷/村田晶子
- 2 大日本連合婦人会による花嫁学校―御茶の水家庭寮の展開/伊藤めぐみ
- 3 「わたし」を問う「女性の学習の歩み」レポート―女性の自己学習と自己表現の軌跡 /米田佐代子
- 4 女性関連施設の沿革と女性団体/大野曜
- 5 自己開発学習の検討―日本女性学習財団と国際女性教育振興会を例に/新井浩子
■ 資料編
設立趣意書・寄付行為、役員名簿、事業一覧、発行資料等をそろえ、巻末に年表を掲載
「女性の学習の歩み」実践・研究レポート募集事業の全受賞レポート収録CD‐ROMを付録
※編纂委員 | 村田 晶子 | 早稲田大学文学学術院教授、編纂委員長 |
伊藤めぐみ | 東洋英和女学院大学非常勤講師 | |
米田佐代子 | NPO法人 平塚らいてうの会会長 |