2001年1月号(No.579)
- 巻頭言:新世紀に寄せて/山崎朋子
- 研究レポート:少子高齢化社会の中での女性労働のゆくえ−その課題と展望/大沢真知子
- 学習情報クリップぼ〜ど:「女性のための独立・起業塾」(すみだ女性センター)
- シネマ女性学:『ある歌い女の思い出』
チュニジア・フランス合作映画
母のように生きず、母のように愛する/松本侑壬子 - 活動情報(1):「まちの福祉づくり」を目指して/大津典子
とやま福祉ネットワーク〜まちの福祉しらべ隊〜 - 活動情報(2):東北と女性センターの未来を考える/藤原美妃子
―手づくりシンポジウムを企画して - Women's View:
21世紀こそジェンダー・フリー/岩永さやか
女性たちの意識の改革が出発点/杉浦ひとみ - このひと:細谷洋子さん(「私たちのアクションプラン」代表)
- きょうのキーワード:男女共同参画社会基本計画
- 2000年度「女性の学習の歩み」実践・研究レポ―ト選考結果報告
巻頭言
新しい世紀に寄せて
山崎朋子(やまざきともこ)
先年私は、ある学術出版社から、『叢書女性論』なるものを出版し、それを監修した。いわゆる明治維新より第二次大戦までの間に、「日本女性」が「自身の生き方」をまさぐって書いた書物を全43巻に集成して復刻したものである。
教育者をはじめ、歌人・小説家・女性運動家・女優・医師・宗教家など、さまざまな分野で活躍した女性先輩たちの「生の声」に接して、あらためて思うことが少なくなかった。43冊の中には「フェミニズム・女権拡張論」のみでなく、「良妻賢母主義」に立つものも取り上げ、偏りのないように編集したつもりである。
しかし、そのいずれの立場においても共通して言えることは、天皇制的絶対主義のもとへ女性たちの考え方と行動が、当初の「個」の自覚と主張から、少しずつ「国家」の主張へと近づき、やがては国家の神に繰り込まれていった跡があるということだ。女性の権利を獲得するという目標のために国家の要求と手を結び、戦争―破壊への道を女性もすすんで歩いていったという歴史の苦い教訓を、汲み取らないわけにはいかない。
日本人の習性の一つに「新しいもの好き」がある。これは言い換えれば進取の気象というもので、決して悪いことではない。けれども、その進取の気象の土台には、「喉元すぎても熱さを忘れず」、つまり歴史に謙虚に学ぶ姿勢が確立されている必要があると思うのだ。
目の前の事象や問題に取り組むときに、先輩たちが全力で対応し生きてきた道のりを知り、彼女たちの「成功」からも「失敗」からも学んで、新しい世紀を開いていきたいと思うのである。
プロフィール
1932年長崎県生まれ。結婚後長女を出産してから女性史研究を始める。
『日本の幼稚園‐幼児教育の歴史』で毎日出版文化賞。『サンダカン八番娼館‐底辺女性史序章』で大宅壮一ノンフィクション賞。『光ほのかなれども‐徳永恕と二葉保育園』で日本保育学会賞・全国杉並幼稚園連盟賞を受賞した。2001年1月より「週刊朝日」誌面に「サンダカンまで‐わたしの生きた道」を連載する。