月刊 We learn バックナンバー

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2001年6月号(No.584)

  • 巻頭言:エンパワーされる女性詩人たちの言葉/吉岡しげ美
  • 研究レポート山梨の女たち・男たちのエンパワーメント/池田政子
    −「男女共同参画アドバイザー養成講座」から地域実践へ−
  • 学習情報クリップぼ〜ど:講座「これから結婚を考えるあなたへ」(名古屋市女性会館)
  • シネマ女性学:『僕が天使になった日』
    アメリカ映画
    不思議なS・マクレーンの世界/松本侑壬子
  • 活動情報(1):“おなご”の手から生まれるもの/小坂たまみ
  • 活動情報(2):パートナーシップって、言うのは簡単!/大久保邦子
    「ボランティア・コーディネーター養成講座」に取り組んで
  • Women's View:
    「女性の学習の歩み」研究セミナーに参加して/横澤清子
    もう一つの「拒否反応」/多治見初子
  • このひと:矢島床子さん(助産婦/「男性助産士導入問題を考える会」代表)
  • きょうのキーワード:男性助産士導入問題
  • 新刊案内:『おや、オヤ?親子・21世紀−「家族をひらく」関係づくり』日本女子社会教育会発行

巻頭言

エンパワーされる女性詩人たちの言葉

吉岡しげ美(よしおかしげみ)

 与謝野晶子、岡本かの子、金子みすゞ、茨木のり子、新川和江、高良留美子……。日本の女性詩人や歌人の言葉にメロディをつけ、歌い始めて25年が過ぎようとしている。そして、いま作曲作品は500をこえた。
 1970年代。流行歌に描かれている女の定型は、色白で細身、長い黒髪でおとなしげ。“あなた好みの女になりたい”“私はあなたに命をあずけた”などと平然と口にしていた。勿論、私のまわりには、このような女はまったくいなかった。
 私といえば、作曲家として自立するために必死だったにもかかわらず、音楽スタジオで指揮する私に、男性ミュージシャンからは、「姐ちゃん、こんなことしていないではやく嫁に行きなよ」の言葉が浴びせられた。「そんなこと、あなたに言われる筋合いないわ」。心の中で叫びながら、女というもの、女である自分を考え始めた私は、こんなにも男の価値基準に包囲されて生きているのかと、ただ唖然とするばかりだった。行き場のなさに苛立つ私にとって、女性詩人たちの言葉との出会いは、エポック・メーキングな出来事となった。
 「自分の感受性くらい自分で守ればかものよ」(茨木のり子)、「わたしを束ねないで」(新川和江)、「みんなちがってみんないい」(金子みすゞ)、「すべて眠りし女、今ぞ目覚めて動くなる」(与謝野晶子)。私の心にストレートに飛び込んでくる女性詩人たちの言葉に勇気づけられ、エネルギーをもらい、私は自分自身や女たちの明日への扉が開かれていくのを感じていた。
 21世紀は女の時代、などと媚びた口調で男たちは言う。そういいながらすべてをご破算にしてしまおうというのか。女たちが長い年月をかけて手にした小さな自由、存在の確かさ。
 翼をはばたかせていることにただ喜びを感じているわけにはいかない。風化させてはならないことが何とたくさんあることか。だから、私は20世紀に紡がれた詩人たちの言葉を歌い続ける。

プロフィール
音楽家。1977年より、日本の女性詩人、歌人の言葉に曲をつけ歌い始め、国の内外でコンサート活動を続けている。
CD『金子みすゞの世界』(東芝EMI)『花万葉』(日本コロムビア)他多数。著書『想ひあふれて』(毎日新聞社)『バークレーの小麦たち』(JULA出版局)他。放送、舞台、映画音楽も多数担当。今年は、国内のコンサートの他にモンゴルでも予定されている。また、初の絵本出版、日中韓共同製作ミュージカルの音楽も担当する。

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