2001年12月号(No.590)
- 巻頭言:男性教養/落合恵子
- 特集:2001(平成13)年度フォーラム「女性と学習」
地域で考える女性・子ども・高齢者に対する暴力 - 事例発表:
事例1
● フォーラム
「ドメスティック・バイオレンスを乗り越えるために〜DV被害体験から学びあおう」を企画・実施協力して/河合容子(フェミニストサポートセンター・東海)
事例2
●市民企画講座
「ストップ!女性・子どもへの暴力」を原点に/登石知子(グループ「女綱(なずな)」ストップDVとやま)
事例3
● 子どもへの暴力防止プログラムを広げるために/草野順子(CAPかながわ) - ワークショップ:
ワークショップに向けた学習支援者からのメッセージ
ワークショップ報告
●WSI:サポートと連携―社会資源のつながりを考える学習
●WSII:意識・行動の変容へのつながりを考える学習
●WSIII:ケアと暴力―問題のつながりを考える学習 - 討議を深めるミニレクチャ―
●DV防止と女性運動―日韓DV調査から/亀田温子
●コンフリクト・リゾルーション(葛藤の解決)・プログラムモデルから/中村正
●2つの悪循環を断つには―問題のつながりへのまなざし/内藤和美 - 全体会:気づきを深め、気づきを広げていくために
- 「フォーラム」に参加して
- ご案内:「女性教養」バックナンバー紹介
巻頭言
男性教養
落合恵子(おちあいけいこ)
「子どもの性的搾取・虐待」についての原稿を、『女性教養』に、いまわたしは書き始めたところなのだが、むしろこの内容は、搾取する側になりやすい男性にこそ読んでいただきたいと思う。
あらゆる「女性問題」が、その実、「男性問題」であるように、そして人権問題であるように、性的搾取・虐待もまたその例外では決してないのだから。とするなら、『女性教養』の読者にメッセージすべきことは何なのか。
アメリカにおいて、女性たちが自らの心とからだの主人公となり、例えば性暴力を、例えばドメスティック・バイオレンスを告発した、あの第二期フェミニズムの流れの中で、子どもへの性的搾取や虐待防止への波が生まれたように、女性自らが、まずは自分の人権をさらに深く、さらに個人的に、かつ普遍化して見つめ、耕すことから始めたい。
砲火の下を生き延びたレバノンの少年は、「大人になったら、何になりたい?」と訊かれて、次のように答えた。
「大人になったら、・・・・・・子どもになりたい。だって、ぼくには子ども時代がなかったのだから」
性的搾取や虐待の被害者になった子どもたちもまた、同様に答えるに違いない。それゆえに、わたしたち大人は言い続けなければならないのだ。「あなたのからだはあなたのもの。他の誰のものでもない」と。「unwelcomeなことに、はっきりとNOと言っていいのだよ。NO(拒絶し)、GO(逃げて)、TELL(信頼できる大人に告げよう)が大事だ」と。さらに、大人である自らの性的・人的選択権を侵害するものに対しても、むろんNOと言い続けなければならない。
そして、往々にして性的搾取の底に流れる、より多く持つ者と、より少なくしか持てない者、経済的格差、南北問題を拓く社会に向けての働きかけも、忘れてはならないはずだ。
プロフィール
1945年栃木県生まれ。作家。日本で初めて、女性の側から性暴力を告発した小説『ザ・レイプ』を発表。
家族、社会、教育、環境問題などを、誰にとってもわかりやすく考えられる小説の形で表現し続けている。
また、「クレヨンハウス」「ミズクレヨンハウス」を主宰、『月刊こども論』等を発行。海外での講演活動にも取り組む。近著に『小さな手、折れた翼』『絵本だいすき!』『私の愛する孤独』(翻訳)など多数。