小島明日奈(こじまあすな)
「あのさあ、カンセツサベツって何?」不意に社内の男性に聞かれた。均等法施行後、女性の多くがこの大きな壁の前でもがいているのに、この認識不足!と憤ってはいけない。世間もマスコミもそれが現実。
そもそも、この言葉すっと頭に入りにくい。「表面上男女異なっていないが、一方の性に差別的効果をもたらすような取り扱い」などと話しても伝わらない。パートが頭に浮かぶが、「男が働いて、女がパートで家庭と両立させるの、何が悪いの?」とたいていの男性は疑問を抱かない。「世帯主」とて同じこと。
困ったあげく、「うちの会社、女を部長にしないという決まりはないけど、女性の部長いないでしょう。明記してないけれど、結果的に差別していることです」。そうか、と合点した様子。女性部長なんて想像もできない、そんな共通認識があるから通じるこの説明。喜んでいいものかどうか。
今年、試案が出た年金分割。評価は分かれるが、別姓や離婚分割さえ認めないのに、年金の分け前を妻に譲るなんて、男性が承知するわけない、と思っていた。
ところが、社内の男性の反応が変なのだ。別に…といった感じ。「自分の年金が減るんですよ」「定年離婚しやすくなるかも」と言ったら、「定年離婚ってひとごとなんだよね」「名義上とられるからってガタガタいうの、みっともないじゃない」フーン、そうくるかあ。
男女の認識のミゾを埋めるのは容易ではない。でも、なんだかやり方はあるかもしれない。制度が変わり意識がついてくることもある、だろう。正攻法を否定するつもりはないが、変化球だってたまにはいい。作戦を練る時代がきた、そんな気がする。
プロフィール
1960年島根県松江市生まれ。毎日新聞生活家庭部副部長。入社以来、京都支局、大阪本社社会部を経て、1991年から生活家庭部。
近ごろ、定年退職後の生き方の選択として地域活動を望む男性が増えている。地域活動を上手に進めている退職後の男性たちには、共通の傾向があることに気づいた。
1つは、人の意見を受け入れ(特に女性の!)、リーダーシップをとることよりも、下働きを率先してできること、2つめは、性や世代に対し、偏見をもたない努力を怠らず、むしろさまざまな出会いをおもしろがれること。3つめは合理性だけでものごとが進まないことに、耐えうること。
「ワシが、ワシが」と自己中心的な「ワシ族」にならずに、周囲の人と合意を得ながら、ものごとを進めるのは慣れない仕事かもしれない。また、悪気なく買出しや受付を女性にふってしまい、顰蹙をかうケースも見受けられる。その一方で、30代女性がリーダーとなって、熟年男性とともに活動するグループも身近に知っている。これまでどっぷりつかっていた男社会から、ふわりと身をかえせる、「やわらかな頭と身のこなし」が、これから地域デビューする男性にとって、活動の秘訣のようだ。